顎関節症

当院の患者様にも大勢おられますが、歯ぎしりにお困りの方は多いと思います。ひとくちに歯ぎしりといっても様々なタイプがあり、自覚症状がなく、音を立てないタイプもあることをご存知でしょうか?
このページでは自覚症状のないまま歯ぎしりによって歯が大きなダメージを受けてしまい、顎関節症を引き起こしてしまった症例をご紹介します。
なお、治療が現在進行中ですので内容は随時更新していきます。

顎関節症の治療症例

歯ぎしりの自覚症状がない顎関節症

≪初診≫  

当院に最初にいらした時の口の中の状況です。
ごらんになると一目瞭然なのですが、長年にわたる歯ぎしりのせいで歯が全体的に磨り減ってしまい、神経が露出しかかっています。
恐ろしいことにこの患者様にはいままで特に歯ぎしりの自覚症状がありませんでした。
以前通っていた歯科医院では特に歯ぎしりに対する処置は行われておらず、すりへった歯の高さにあわせてすべての治療がなされており、このままでは数年後には口腔内全体がかみ合わせの崩壊をおこしてしまいます。
また、この患者様は事情により健康保険適用の範囲内での治療を希望なさっています。この限られた条件でどこまでかみ合わせを回復させられるかがこの症例のひとつの大きな課題になります。

初診
初診

≪奥歯のかみ合わせを回復≫

この治療では、まずは奥歯のかみ合わせを回復させるところから始めました。それにより顎関節症の症状も緩和されることになります。

左側の写真の○の部分に金属のクラウン(かぶせもの)が入りました。これで奥歯のかみあわせの高さが2~3mmあがり、歯がすりへってしまう以前の、生理的に自然な高さを保つことができます。
これだけでは反対側がまったく噛まなくなってしまいますので、右下(患者様にとっての)にプラスティックで仮歯を作り、調整を繰り返しながら自然に奥歯がかみ合う高さを探していきます。

奥歯のかみ合わせを回復
奥歯のかみ合わせを回復

下の写真は、仮歯の調整を何回か繰り返し左右とも自然なバランスで噛めるようになった状態です。
写真のピンクの○で囲んだ部分が、歯ぎしりですりへってしまった高さを回復させた歯です。
この段階で奥歯のかみ合わせの高さ、左右のバランスは、患者様の生まれつきの状態までほぼ戻っております。主な訴えのひとつであった、「口を大きく開くとき顎が痛い」・「顎がカクカク音がする」といったいわゆる顎関節症の症状にも改善の傾向がみられるようになりました。
青い四角で囲んだ前歯の部分はかみ合わず、隙間があいておりますが、この隙間のぶんが今まで歯ぎしりで失ってしまった高さです。奥歯の噛みかたが安定してから前歯のかみ合わせを改善していく必要があります。

奥歯のかみ合わせを回復
奥歯のかみ合わせを回復

仮歯でのかみ合わせ調整を数回の治療にわたっておこない、高さ・左右のバランス・顎を動かした時に特定の歯だけが引っかからないかを十分に確かめました。
その仮歯のかみ合わせを参考にして、歯ぎしりの圧力に負けないように金属のブリッジ(ダミーを含む連結冠)に置き換えました。
一番左の写真の○で囲った部分が金属のブリッジです。中央と右の写真はかみ合わせた状態を左右からみたところです。
これで奥歯のかみ合わせは機能的に回復したと言えますので、次回からは前歯のかみ合わせの回復に取り掛かります。

奥歯のかみ合わせを回復
奥歯のかみ合わせを回復
奥歯のかみ合わせを回復

≪前歯のかみ合わせを回復≫
当院での治療前は奥歯の高さが歯ぎしりによって失われており、前歯に必要以上に水平方向の力が加わっていたために、前歯の歯質がはじけとんでしまっていました。
そのために前歯があたかも半分ほどの高さのところで折れてしまったかのように見えていました。
左の写真の前歯の部分を見るとおわかりかと思います。
しかし当院での治療により奥歯に機能的なかみ合わせが再現できましたので、今回からは前歯のかみ合わせの修復にとりかかります。上の前歯のかたちから回復させていきました。
写真のピンク色で囲んだ部分が今回治療した部分です。
左側が治療前、右側が治療後の状態です。
また、右の写真の真ん中の青い線はこの患者様の体の中心線を示したものです。奥歯のかみ合わせの調整の甲斐あって、上下顎ともにかみ合わせの中心線が体の中心線にそろうようになってきました。

前歯のかみ合わせを回復

上の前歯の形態を審美的にも機能的にも修復できましたので、上の前歯の状態にあわせて下の前歯の治療にとりかかりました。
写真左側は治療前、右側は仮歯が入った状態です。
奥歯のかみ合わせ治療時と同様、仮歯でかみ合わせ調整を繰り返して、歯ぎしりしたときに歯周組織にダメージを与えないかみ合わせを注意深く模索していきます。

前歯のかみ合わせを回復

仮歯にて調整をくりかえしたかみ合わせを模型上にて再現して、最終的なクラウン(冠・かぶせもの)を作成しました。 写真は治療前と治療後を比較したものです。
審美的・機能的に大きく改善されたのがお分かりになるかとおもいます。
これで奥歯に続いて前歯も、生まれつきに近い理想的な状態まで回復したことになります。

前歯のかみ合わせを回復

≪歯ぎしり防止装置の装着≫

前歯・奥歯ともに安定したかみ合わせを再現することができました。
そこでようやく歯ぎしり自体に対する処置に移ることができる状態になりました。
口腔内を再現した模型上に特殊な素材で歯ぎしり防止装置を作成します。
これを就寝中に患者様に装着いただくことにより、歯ぎしりを起こしにくくなり、また歯ぎしりをしてしまうときにも歯・顎関節に対するダメージを最大限に和らげることができます。
この装置を装着してから、患者様は「眠りが深くなったようだ」とおっしゃるようになり、睡眠時の歯ぎしりによる無意識な緊張状態がかなり改善されたようです。

歯ぎしり防止装置の装着
歯ぎしり防止装置の装着