歯科口腔外科の日記


その2

なぜ親知らずは早く抜いたほうが良いのか

みなさんこんにちは。

今回は私たち歯科口腔外科を担当している歯科医師があつかう病気のなかでも比較的みなさんに身近な親知らずの話をします。
成人の方の中に親知らずが一本もない方は意外と少ないのではないでしょうか。また、少しは生えているけれど完全には生えていないという方が大半だと思います。私が日常の臨床で遭遇する中で上下の親知らずがきちんとかみ合っているかたはほんの一握りです。

でも、このきちんと生えていない親知らずが、特に悪さをするのです。きちんと生えていないということは、半分歯肉(歯ぐき)が一部かぶったままではえているわけですから不潔になりやすいということです。本当はしっかりと磨いていなければいけないのに奥のほうでハブラシがなかなかいき届かないのが残念ながら現状です。そして、疲れたり体力が低下したりして免疫力が低下したときにその親知らずを覆っている歯肉が腫れて赤くなったり、膿が出たり、さらにひどくなると「蜂窩識炎」という、顎の筋肉の隙間のほうにまで炎症がひろがり熱が出て喉が痛くなったり、頬や顎のほうまで腫れる場合もあります。腫れる場所が気道(肺への空気の通り道)を狭くするような場合には手遅れになると命取りになる場合だってあるのです。

患者様に「痛みがないのに抜かなければいけないのでしょうか。」と聞かれる場合もありますが、もし、将来痛みがでたり、何か不都合が生じたとき、いざ抜こうと思っても例えば、血圧や血糖値が高いなどリスクがあるとすぐ抜くというわけにはいきません。

先日、私の患者様で70代の方は全身麻酔で抜歯した症例がありました。親知らずは生えてから年数が経つにつれて「癒着」といって顎の骨とがっちりくっついてしまう現象がおこってしまい、患者様も術者も大変です。20代の方と40代の方では全然術後の治りも違います。ですから、私は経験上、できるだけ早めに抜いてください。と是非お勧めしたいのです。

また、女性の方は妊娠中に腫れたりしたら、お薬が使いづらかったりといったこともありますのでなおさら早めに抜くことをお勧めしたいのです。実際、妊娠中に親知らずがはれた患者様を何人も拝見しました。

とはいってもなかなか勇気がでないという方もいらっしゃるかと思いますが、御年を召されるごとに年々抜歯が全身に与えるリスクは高くなってきますから、親知らずがそのままになっている方はなんとかここで決断していただきたいと思います。

もちろん、もし抜歯をする場合は担当の先生の説明をきちんと伺った上で、万全の体調で望んでくださいね。(ちなみに私もつい数ヶ月前に上の親知らずを抜きました。これが最後の1本でした。久しぶりに抜歯をすると患者様の気持ちがわかって勉強になります。)

疲れがたまってしまうと親知らずが腫れやすくなります。もし症状が出たら早めに受診をしましょう

その1

はじめまして!

はじめまして。
私はヤシマ歯科医院に嘱託医として治療に協力させていただいております、歯科口腔外科を担当している山﨑と申します。

皆さん歯科口腔外科とはどういう治療を行っているところかご存知でしょうか?
私は総合病院の歯科口腔外科というところに勤務する歯科医師です。歯科口腔外科って何?歯科と何が違うの?と疑問をもたれる方も多いかと思いますので、この機会に簡単ではありますが、歯科口腔外科医とは日常何をしているのかをまずご紹介したいと思います。

例えば、皆さんの中に親知らずを抜歯した経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。特に骨に半分埋まっているような、専門的な言い方をすると埋伏歯といわれる親知らずなどを抜歯する際に近所の歯科医院で、「歯科口腔外科で抜歯してきてください」と言われて大学や病院の歯科口腔外科に受診されたかたはいらっしゃると思います。

このような、通常の抜歯ではなく歯茎に切開を入れたり、歯の周りの骨を削ったりして抜く抜歯などが私たちの仕事で多いです。

その他、歯の根の先の病気をこじらしてしまいお顔がパンパンになるまで腫れて食事もできず、全身管理が必要で入院が必要な患者様の治療や、スポーツや事故などで顎の骨を骨折して骨をくっつける手術が必要な患者様の治療などもしています。

こうなってくると「え~?歯科でも入院するの?」と驚かれた方も多いかもしれませんね。でもこれも歯科医師の仕事のひとつの分野なのです。

もちろん、私は総合病院に勤務していますから、入院患者様の入れ歯を作ったり虫歯の治療をしたり、かぶせ物を作ったりといういわゆる歯科医院でやるようなこともやっています。ただ、歯を削るよりも骨を削ったり、切開したりすることが多い歯医者さん。という感じでしょうか。

こんな感じでこれから少しずつ不定期ではありますが、私が日常出会ったことなどをご紹介していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。それでは、今回はこの辺で失礼いたします。